
自然と、道具
コーヒーと、ちょっとしたこだわり

プロデューサー
竹下充
深煎りのブレンドコーヒーしか飲んだことがなかった自分が、10年ほど前に「スペシャルティコーヒー」という存在を知り、初めて飲んだときは、「薄い?酸っぱい?」なんて感想しか出てこなかったものです。それが今では、一丁前に「中浅煎りの華やかな豆がいいな〜」なんて知ったふうに注文してしまったりしています。そんな自分にふと、「コーヒー通を装いつつ、何かを伝えようとしている〜🎶」という曲を思い出したりもします。
特に誰かに何か伝えたいことがあるわけではないのですが、コーヒー豆は世界中にものすごい数の種類が存在し、価格帯も幅広く、その中から自分なりに選び、微妙な味わいの違いを楽しむ。また、事前に得た情報と実際に飲んだ後の感想を答え合わせするようなやりとりができることも、コーヒーの魅力なのだろうと思っています。さらに、出張や旅行の際にも、国内外の行く先々で地元の焙煎所やカフェと出会い、一期一会のコーヒーを楽しむことも。
これは、食欲と同時に知識欲も満たしてくれるような感覚かもしれません。ワインや日本酒にも似たものを感じますが、コーヒーには味わい以外にも惹きつけられる要素があります。それが、「コーヒーグッズの幅広さ」です。
たとえば、コーヒーミルひとつ取っても、電動・手動、ミル歯の形状や素材によって挽き上がりに違いが出ます。抽出方法も、ペーパードリップ、ネルドリップ、フレンチプレス、エスプレッソ、水出しなど様々。さらに、ケトルやカップにまでこだわりだすと、もはや収拾がつかないほどのバリエーションが存在します。そんな中から、自分なりに満足度の高い道具を選び、お気に入りの場所で、特別な時間を作って、至福の一杯を味わう。ここまでくると、コーヒーは単なる飲み物ではなく、贅沢な「遊び」のひとつなのかもしれませんね。
とはいえ、そんなこだわり満載の一杯も良いのですが、自分がキャンプでコーヒーを楽しむときは、もっとラフでワイルドです。パーコレーターに適当に豆と水を入れ、焚き火にかけてしばらく放置。「そろそろかな?」と何度か味見しながら出来上がりを待つ。そんな作り方なので、味はそのときによってバラバラ。でも、アウトドアという環境も手伝って、それもまたおいしく感じたりします。
そんなコーヒー通を装う自分のもとに、新しいアイテムが届きました。ベトナムのお土産としていただいた、「ベトナムコーヒーセット」です。アルミ製の小ぶりな銀色のドリッパーを使い、練乳入りのカップに深煎り豆をゆっくりと抽出していく、あれです。

20年以上前に飲んだ記憶はあったものの、それ以来特に「また飲みたい!」と思うこともなく、ベトナムコーヒー推しのカフェにも出会わなかったので、すっかりノーマークでした。
けれど、せっかくいただいたので試してみたところ、その味にびっくり! 「ベトナムコーヒーって、こんなに美味しかったのか!」と感動。
今回届いた豆が極上だったのか、器具が優れているのか、それともベトナムコーヒー自体の平均レベルが高いのか? お土産を贈ってくれた人に、新しい扉を開けられたような気分です。調べてみると、ベトナムコーヒーにも練乳以外の飲み方があるようで、この道具の探求が始まりそうな予感です。
わたしの素
コーヒーのお供といえば、やっぱりスイーツですよね。
スイーツに関しては、手作りの経験もほとんどなく、特別お気に入りのケーキ屋さんがあるわけでもありませんが、基本的に甘いものは大好きです。
チョコレート、クリーム、ケーキ、クッキー……。歳を重ねるうちに和菓子も好きになりましたが、どちらかといえば洋菓子派です。
特にこだわりがないので、自分用にはもっぱらコンビニスイーツを買っています。そんな自分のスイーツ知識は、展示会やレセプションでもらったお土産から得たものがほとんど。ホームメイドのカヌレや、グルテンフリーのカップケーキ、西麻布あたりのアールグレイシフォンケーキなど。いざ手土産に悩んだときは、そんな情報をフル活用させてもらっています。
ちなみに、餡子より生クリーム派なので、自分にとっての贅沢コーヒーNo.1は「ウインナーコーヒー」。けれど、スペシャルティコーヒーに目覚めてからは、「ストレートが美味しいコーヒーに生クリームを入れてもいいのだろうか……?」と自責の念に駆られます。でも、その背徳感もまた、ひとつのスパイスだったりします。

連載
自然と、道具の扉

プロデューサー
竹下充
自然が大好きで自然と道具でとことん遊んできた竹下さんと仲間たちの素となった食事。
扉の記事