
「今日もていねいに。」
食いしん坊のクローゼット

エッセイスト
松浦弥太郎

015 スティーブ・ハリソンの皿
桐島かれんさんは、生放送で毎週二時間の「かれんスタイル」というラジオ番組を8年間一緒に続けた友人のひとりだ。かれんさんは世界中を旅して、各国の手仕事品や工芸品を集めた「ハウス・オブ・ロータス」という生活雑貨と服の店を経営していた。ある日、そんなかれんさんのオフィスで打ち合わせをしていたときに、釉薬に塩を使った、とてもすてきなマグカップで紅茶を淹れてくれた。聞くと、ロンドン郊外で作陶するスティーブ・ハリソンの作品だと教えてくれた。このきっかけでぼくは、スティーブ・ハリソンの食器を集めるようになった。作品の多くはマグカップだが、お皿やボウルもときどき作るようで、ぼくはどちらかというと皿やボウルを買い求めた。それらは紅茶文化のイギリスだからか、ケーキやスイーツにとても合う食器で、スティーブ・ハリソン自身、イギリスの伝統的なウェルシュケーキを焼くのが得意だという。
今日は自家製のいちごジャムをはさんだバターロールをのせてみた。お皿の独特な配色が、バターロールといちごジャムのおいしさを引き立てて、ちょっとファンタジーな世界が生み出されている。そう、スティーブ・ハリソンの、そのファンタジーな世界観がぼくはとても好きなんだ。

食いしん坊のクローゼット
001 三時のおやつに菊皿
002 アスティエの角皿
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿
004 1930年代のカフェオレボウル
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
連載
「今日もていねいに。」の扉

エッセイスト
松浦弥太郎
少しちからをぬき、キホンを大切にする松浦弥太郎さんと、彼ならではの素をつくる、くらしと食事。
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