
山と感覚
ネパール旅日記 vol.3

山岳収集家
鈴木優香
2週間の旅を終えて既に帰国しましたが、まだまだ余韻に浸っていたい...ということで、今回はトレッキング中に食べていたものをご紹介します。

ローカルバスで、カトマンズからシャブルベシ(登山口となる村)へ向かう途中に食べたダルバート。ダル(豆)スープとごはん、ジャガイモや青菜を炒めたもの、辛いソースをよく混ぜて食べる。ごはんを少なめにしてほしいと伝えたのに、どんぶり一杯分くらい盛られてしまった。ネパール人のガイドはこの2倍くらいの量を食べていて、驚愕した。


ダルバートは山小屋のメニューにも必ず載っているが、街中で食べるものよりもおかずの品数が減り、シンプルになる。作る人によって色々な味があって楽しい。


トレッキング中は朝、昼、夕、晩と4回お茶を飲む。自分では絶対に買わないであろうデザインのマグカップで、温かい紅茶を飲むひとときがこの上なく幸せだった。ザラメの砂糖はキラキラしていてきれいだが、たまに虫が混ざっているので注意が必要。スプーン2杯分入れて、甘くして飲む。何にも代え難い愛おしい時間。(そういえば、帰国前にザラメの砂糖とシュガーポットを買って帰ろうと思っていたのに、すっかり忘れていた)

朝食には、チャパティとチーズオムレツをよく頼んだ。もともとはチャパティとオムレツというメニューなのだが、特別にチーズも追加してもらった。口の中がパサパサするので、ミルクティーと一緒に食べるとちょうどいい。始めはナイフとフォークで食べていたが、ガイドとポーターがくるくると巻いて手で食べているのを見てなるほどと思い、次からはそれに倣った。

卵の入っていないシンプルなパンケーキもよかった。バターも付けてほしいとお願いしたが、なかったらしく、蜂蜜のみ。山小屋の主人が、バターの容器らしきものを開けて匂いを嗅ぎ、苦い顔をしていたので、傷んでいたのかもしれない。

ヌードルスープは、インスタント麺に炒めた野菜や卵を入れたもの。出来上がるのが早いので、ランチのときによく頼んだ。また、標高が高くなってくるとダルバートのような重いものが食べられなくなってくるので、ヌードルスープにはとても助けられた。
これも、もともとは野菜か卵のどちらかを選ぶメニューなのだが、ビタミンや食物繊維、タンパク質不足を感じていたので、いつもどちらも入れてもらっていた。卵は薄焼き卵が上に乗っているときもあるし、スープに混ぜられているときもあった。

モモと呼ばれる蒸し餃子。山の中では肉の用意が無いので、ベジ(野菜)モモ。これはあまりジューシー感がなかった。


標高3,500mのランタン村にて。頭痛と寒気、若干の吐き気がするとガイドに伝えると、ここでもやはりガーリックスープをすすめられた。さらに、この辺りで採れた山椒もかけると良いとのこと。
以前エベレスト街道をトレッキングした際に、生のニンニクが入った辛いガーリックスープを経験していたので、恐る恐る飲んでみると、このガーリックスープは全く辛くない。まろやかで優しい味に、山椒がほどよいアクセントになっている。飲み干す頃には、身体がすっかり温まっていた。
今回も同じタイミングで高所順応を助ける薬を飲んだので、ガーリックスープの効果はわからないままであるが、お守りとして飲んでおくと気持ちが楽になるような気がした。


標高4,980mのツェルゴリを目指す日は、ランチに山小屋に戻れないので、お弁当を持っていくことに。この日はチャパティに蜂蜜、ゆで卵、甘くしたブラックティー。ゆで卵ふたつは多いので、ひとつはポーターに食べてもらった。

チャパティは冷めると硬くなりやすいので、いつもはチベタンブレッド(油で揚げたパン)を持っていくらしいが、油で胃がやられそうなので、油で揚げないチャパティにしてほしいと頼んだ。そうしたら、チャパティの保温容器まで担いで来てくれていて、なんだか申し訳なくなった。ありがとう。
その後、山頂に着く前に雨が降ってきてしまったので登頂は諦めて下山することに。道中で高山植物をたくさん見つけることができたし、このお弁当の時間があったおかげで、登頂できなかったことへの悔しさは不思議と湧いてこなかった。


秋になるとランタン周辺で採れるシーバックソーン(サジー)の実から作ったジュース。作ってから時間が経っていたからか、少しお酒のような香りがした。少し酸味もあって、不思議な味。

太麺の焼きそばのような、チョウミンというメニュー。もそもそとした食感で、あまり好きではなかった。

下山している途中で、ガイドが見つけた巨大なキノコ。においで食べられるかどうかわかるらしい。写真には写っていないが、満面の笑みだった。


キノコはその日に泊まった山小屋で調理してもらい、ダルバートのおかずのひとつになった。ここでもやはりごはんが多く、お腹がはち切れそうだった。

トレッキングが終わり、シャブルベシに戻ってきて、いちばんに飲んだコーラ。無事に山から下りてきたという安心感と充足感。そして、もうすぐ旅が終わってしまうのだという寂しさを噛みしめながら飲んだ。

コーラとともに食べたチキンモモ。これはとてもジューシーで、真ん中のピリ辛ソースも美味しく、ぺろりと平らげてしまった。ニンニクがかなり効いていて、しばらくはその香りと共に過ごすことに。

山小屋のメニューにはトーストがなかった(雨季はトレッキング客が少ないので、山小屋にはすぐに悪くなってしまうパンは常備していないらしい)が、シャブルベシのホテルにはあったので、朝食に頼んでみた。ふわふわ感はなくて、サクサクのラスクのような食感。ヤクのバターと蜂蜜を付けて。

再び、シャブルベシからカトマンズに戻る途中で食べたダルバート。この日もごはんを少なめにしてもらえなかったので、ガイドに手伝ってもらった。揚げたチキンがスパイシーで美味。ああ、最高のトレッキングだった。
おわり。
連載
山と感覚の扉

山岳収集家
鈴木優香
山は日常にはない美しい瞬間を与えてくれる場所と語る鈴木優香さんと、彼女らしさの素をつくる山登りとともにある食事。