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本と生き方

連載

本と生き方


世の中の事や人の事を想い、本と人をつないでいく木村綾子さんと、彼女らしさの素をつくる、本から影響を受けた食事。

わからないはたのしい

わからないはたのしい

覚えている限りのいちばん古い記憶ってなに?先日、ある人からそんな問いを差し出された。「あまり考え込まず、思うままに」と促されて私がはじめたのは、こんな話だった。私は床に寝かされていて、仰向けの状態でま...

家族の食卓

家族の食卓

誰の部屋でもなくなった部屋で目が覚めた。かつて自室だった6畳間に私の使い古したベッドや勉強机はもはやなく、家族の誰がどの時期に使っていたものなのか、持ち主さえ不明と化したこたつテーブルやカラーボックス...

更地の上に立つ記憶

更地の上に立つ記憶

昔住んでた家を見に行きたくなるのはなぜなのだろう。実際行ってみたところで、「あ、ある。あるなあ」程度の気持ちしか湧いてこないのに、それでもなお、ただ「ある」ことを確かめたくなるのはどうしてだろう。スト...

昭和の子ども

昭和の子ども

こっくりさんを知っているだろうか。昭和の小学生の、主に女子のあいだで流行っていた占いあそびだ。こっくりさんは狐の霊で、ある方法でその霊を呼び寄せることに成功すると、質問や悩みに答えてもらえる。いわゆる...

正解がわからない

正解がわからない

何年、何十回と作っていても、正解がわからない食べ物がある。たとえばハンバーグ。私の作るハンバーグは、タネの段階でしっかり下味をつける。基本のひき肉、玉ねぎ、牛乳、パン粉に加えて、にんにく、生姜、塩コシ...

ていねいな暮らし、生活の知恵

ていねいな暮らし、生活の知恵

「『ていねいな暮らし』してるね」と言われて、ちいさな違和感を覚えた。この冬はじめた干し野菜の話だ。きっかけは実家から届いたダンポールいっぱいの野菜だった。趣味と家計の助けを兼ねて家庭菜園をしている静岡...

ナニーシェ!

ナニーシェ!

どこに着くのかわからないまま旅に出た。 かつて『世界ウルルン滞在記』というドキュメンタリー番組があって、25歳の冬、私はそのリポーターとして2週間の旅人になった。出発の数日前、ロケの詳細が届いて驚いた...

某月某日、スーパーオオゼキ

某月某日、スーパーオオゼキ

◎9月某日、スーパーオオゼキモモショウニク2マイ¥480、トリ¥214、トリ¥217、リンゴ¥199、生椎茸¥199、えのき茸¥109、ブナシメジ¥99、まいたけ¥318、長ねぎ¥199、万能ねぎ¥2...

あの日から続いていた私の知らないいくつかのこと

あの日から続いていた私の知らないいくつかのこと

品川駅で突然声をかけられた。振り返ると一人の女性が立っていて、声をかけてはみたものの、自分の行動に自分で驚いているような表情のまま雑踏に紛れていきそうになっていたので、私の方から腕を掴んでしまった。掴...

夏の記憶を更新せよ

夏の記憶を更新せよ

文章を書くときには、読んだ人が楽しくなるような、読んで良かったなと(までいかなくとも、いい暇つぶしになったなくらいには)思ってもらえるような話題を提供できるよう心がけているのだけれど、この連載では、日...

私の家、私の家族

私の家、私の家族

家族と暮らした年月よりも東京暮らしが長くなってずいぶん経つ。その境目にあたる30代後半くらいから、「家族」や「家」とはいったいなになのだろうと考えることが多くなった。私は結婚をしていないので、「家族」...

文字に染み込む

文字に染み込む

書道家だった祖母は、自宅の離れで書道教室をひらいていた。おばあちゃん子だった私にとって最初期の記憶は、彼女に手をとられて自分の名前を書いた、墨の匂いの立ち込めるその部屋にある。ものにはすべて名前がつけ...

寝ても覚めても、キュウリ

寝ても覚めても、キュウリ

流行りの風邪をひいて、すっかり参ってしまった。さいしょに喉の違和感があって、なんかへんだと思っていたら数時間後にははっきりとした痛みへと変わっていた。そうなると次はスコーンと突き抜けるように発熱するの...

甘やかな秘密

甘やかな秘密

生まれてはじめて一人きりで大きな街まで行ったときのことを覚えている。私の出身地は、静岡県のなかでもわりと名前の知れた市だったけれど、自宅があるのはそこから10キロほど北に行ったところに位置する田舎町だ...

下北沢、ティッシュのナポリタン

下北沢、ティッシュのナポリタン

井の頭線下北沢駅西口を出てすぐの脇道を左に曲がって、50メートルほど行ったところに、その店はあった。店の名前は「TiSSUE(ティッシュ)」といって、看板には「ケーキ喫茶」とある。テーブル席に加えてソ...

言葉と本のチカラ

言葉と本のチカラ

──── 冬にスタートしたおいしさの扉も、春が過ぎ、まもなく半年を迎えようとしています。「本と生き方」の扉を担当していただいているコトゴトブックス店主の木村さんに、日常を綴る連載への思いや、最近の出来...

その笑顔に惹かれる理由

その笑顔に惹かれる理由

「すごいねすごいね。こんな本、いったいどうやって作ったの!?」そんなふうに、はまじが言ってくれるので、嬉しくて、渡したばかりの本をふたたび奪い取って、「あのねあのね」と夢中で話をしてしまいました。コト...

十七音の世界

十七音の世界

郵便局からの帰り道、たまらなくなって「くしゅん」とくしゃみをして立ち止まったところ、向こうから歩いてきたご婦人に「どうも、こんにちは」と挨拶をされてしまいました。くしゅん、の瞬間前かがみになった私の姿...

領収書の観察

領収書の観察

先日、友だちとご飯を食べに行ったときのこと。すっかりお腹も満たされて、次行く場所へと気も急いていた私たちは、お会計をお願いすべく店員さんを呼びました。その日はお互い現金をあまり持ち合わせていなかったこ...

物語はつねに自分の外側に。

物語はつねに自分の外側に。

雪が降ると、「大人だなあ」といつも思う。思うのが先か、じっさいにそう呟いてから思うのか、どちらかはわからないけれど、すっかり大人になったいまになっても、雪が降ると「大人だなあ」と呟いてしまうのは、やっ...

あなたにとって、記憶を共有できるご飯はなんですか?

あなたにとって、記憶を共有できるご飯はなんですか?

先日、久しぶり会った友人たちとご飯を食べていたときのこと。「これ見て。ほらこの絵本、覚えてる?」と言って、ひとりが見せてくれたのは、表紙に描かれた絵によく似た男の子が絵本を抱えている、一枚の写真でした...

小酌事始め。

小酌事始め。

人が祈りを捧げる姿を、正面から見たことはありますか?私がそれを目にしたのは、この家に暮らしてはじめて迎えた年越しのことでした。私の暮らすマンションは神社のお社の裏手に立っていて、リビングの窓からは、大...

好きなことが、そうではなくなったときに。

好きなことが、そうではなくなったときに。

生き方に影響を与えてくれた作家 本という存在が、衣食住とほとんど同義になったのは、いつの頃からだっただろう。思い返すのも困難であるくらい、読書が日常になっている幸福を、日々感じています。本に書かれてあ...

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