トップページへ
「今日もていねいに。」

連載

今日もていねいに。


少しちからをぬき、キホンを大切にする松浦弥太郎さんと、彼ならではの素をつくる、くらしと食事。

冷たくてもおいしい小さなパンケーキ

冷たくてもおいしい小さなパンケーキ

久しぶりのニューヨーク。懐かしさもあってアッパーウエストサイドのブロードウェイを歩いた。建物や木々の景色は変わらないけれど、歩道に面した店は様変わりしている。よく通った古書店や薬局、雑貨屋、カフェとい...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

021 アラビアのライス子どものころ、夏休みに新潟の妙高高原を訪れた。都会の喧騒を離れて、森と風の音しかないその場所で、夜、暗くなると、空気が急に静まりかえるのを感じたことを憶えている。その夜、父に手...

やさしさはやさしさを生む

やさしさはやさしさを生む

久しぶりのニューヨークの夏。相変わらず地下鉄のホームは蒸し風呂のようで、駅を出た途端、鋭い日差しがまぶしくて目を細める。止むことのない車のクラクションとサイレン。人も建物もそれぞれが「何かに急いでいる...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

020 パリの買い物パリの楽しみのひとつに蚤の市巡りがある。中でもクリニャンクールのヴェルネゾンはパリで一番古い蚤の市で120年もの歴史があるという。この場所にアンティークリネンだけを扱うマダム・ジャ...

Kさんと『料理歳時記』

Kさんと『料理歳時記』

真夏のニューヨークが終わり、9月になって、ぼくの一番好きな秋がやってきた。秋のセントラルパークは最高だ。美しい紅葉でみるみると景色の色が変わり、この広い公園をどこまで歩いていきたい気持ちになる。73丁...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

019 欅の千筋茶碗ラジオで「いちばん好きな食べ物は何か?」と聞かれて、「炊きたてごはんと梅干し」と答えた。湯気の上がったごはんを、しゃもじにのせて、決して押さえるようなことはせずに、ころっと転がすよ...

明日のためのドーナツ

明日のためのドーナツ

夕方の6時頃になると、ハドソンリバー沿いのリバーサイドパークに散歩に出かけるのが楽しみのひとつだ。リバーサイドパークは72丁目から150丁目あたりまで続く細長い公園で、川沿いに伸びる美しい遊歩道もあり...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

018 木曽ひのき漆器の弁当箱弁当箱が好きだと言うと笑われるかもしれない。小さな箱の中にご飯やおかずをきっちり詰めた見た目というか、その完成した様がたまらないのです。作った人が食べる人のことを想って、...

自分という土で考える

自分という土で考える

ひとりの時間、しかも静かで安心した気分でのひとときというのは、ほんとうにしあわせを感じることで、そのときに何を思うかというと、これは人によって違うかもしれないけれど、ぼくの場合は、ぼんやりしながら、自...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

017 ラッセル・ライトのカレー皿十代の終わりにアメリカを訪れ、サンフランシスコ、ニューヨークに暮らした。楽しみのひとつに週末のフリーマーケット巡りがあった。買う買わないはどうでもよく、多種多様なアン...

ふたつというしあわせ

ふたつというしあわせ

ニューヨークでひとり暮らしをしていたあの頃、ぼくにとってKさんの存在は大きかった。外国という見知らぬ土地で、ふと、さみしくなったり、困ったことがあったり、わからないことがあったときに電話をしたり、会い...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

016 鳥獣戯画の盛鉢ある日、世界遺産にもなっている京都・高山寺で、うさぎや猿が遊び回る姿を描いた鳥獣戯画の絵巻物を見て、うさぎがでんぐり返しをしていたりする、なんともかわいらしいその絵柄に惹かれて夢...

パリのアメリカ人

パリのアメリカ人

一ヶ月ほどパリに旅行をしたKさん。「パリはどうでしたか?」と聞くと、「そうね、街がほんとうにきれいだったわ」Kさんは、ぼくに紅茶を淹れながらそう答えた。「でも、それは上を見て歩いているかぎりよ。下を見...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

015 スティーブ・ハリソンの皿桐島かれんさんは、生放送で毎週二時間の「かれんスタイル」というラジオ番組を8年間一緒に続けた友人のひとりだ。かれんさんは世界中を旅して、各国の手仕事品や工芸品を集めた「...

クッキーは母の味、手の味

クッキーは母の味、手の味

「クッキーは嫌いだけど、クッキーを作るのは好き」とKさんは言って笑った。 クッキーはオランダの「koekje」という小さなケーキに由来があり、移住したオランダ人がアメリカで広めたとKさんは教えてくれた。...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

014 マルック・コソネンのバスケットフィンランドのキッティラで見たオーロラの美しさが忘れられない。今か今かと待っていると、巨大なカーテンが突然、夜空にうごめきながら現れた。オーロラは音楽を奏でるかの...

自分を変えてくれた朝ごはん

自分を変えてくれた朝ごはん

「朝ごはんを大切にする」毎年、新年を迎えて、心に思うこの言葉。いや、立ち返ると言うほうが正しいかもしれない。30年ずっと同じ新年の思いだ。できないときもあるし、うっかり忘れてしまうときもあるけれど、で...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

013 レモンの木の小皿15年前、パリからモロッコのタンジェに旅をした。小説家のポール・ボウルズがそこに暮らし、代表作の「シェルタリング・スカイ」を執筆したことから、タンジェは長年憧れていた。有名な「...

カリフラワーのサラダ

カリフラワーのサラダ

ニューヨーク西65丁目のKさんのアパートに、料理を教わるという名目で、週に一度遊びに行くのがいつしか習慣になった。Kさんのアパートは歴史的建造物として有名だったが、とにかく古くて不便だった。それが良さ...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

012 仲村旨和のカッティングボード食器棚の中には、大小のカッティングボードもある。僕にとってカッティングボードはお皿でもあるからだ。北大路魯山人の作品に「織部まな板皿」という、その名のとおり、まな板...

「おいしい」は何から生まれるのか

「おいしい」は何から生まれるのか

アンとダーノルドの話をしよう。ダーノルドは、広告会社に勤めていて、会社を辞めて作家になることを夢みていた。アンは、料理の達人でブロードウェイの歌手だった。そうそう、彼らはニューヨークに暮らす夫婦だ。ア...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

011 サーラ・ホペアのコップフィンランドのガラス工房「ヌータヤルヴィ」の『1718』というコップがある。どこにでもありそうなデザインであるが(実際、世界中でデザインがコピーされている)、女性デザイナ...

おいしさはいつもしあわせを呼んでくれる

おいしさはいつもしあわせを呼んでくれる

前回のつづきアーサーアヴェニューで本場のイタリア料理を存分に食べた僕とリリーは、おなかが一杯のせいか言葉少なく帰り道を歩いていた。カンノーリ、ババ、その後に「DOMINICK’S」というレストランでパ...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

010 成田理俊のステンレス皿鍛造作家・成田理俊さんとの出会いは偶然だった。休日の散歩途中、ふと古い雑居ビルに一室にあるギャラリーに立ち寄ると、そこで彼は東京で初めての個展を行っていた。もう15年くら...

カンノーリとババをおかわり

カンノーリとババをおかわり

前回のつづきE180ST駅からタクシーに乗って5分ほどで、アーサーアヴェニュー地区のリトル・イタリーに着いた。緑豊かな街路樹が並び、高い建物がひとつもない、それこそイタリアの田舎を思わせるような、のど...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

009 安南焼の茶碗とっておきの服があるように、とっておきの器がある。僕にとってそれは安南焼の茶碗だ。安南焼とは、江戸時代にベトナム(安南)から渡来した焼き物で、素朴な染め付けに味わいがあり、茶器とし...

ブロンクスのリトル・イタリー

ブロンクスのリトル・イタリー

前回のつづき 「ねえ、明日イタリアに行くんだけど一緒に行かない?」とリリーが言った。「明日? そんなの急過ぎる。行けるわけないよ」と僕が戸惑うと、リリーはいたずらっ子のような顔をして、「サブウェイで3...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

008 ブルーウィローの皿ブルーウィローとは、古い中国を舞台にした悲しいラブロマンスを描いた風景画を皿に描いたものだ。18世紀にイギリスの陶磁器メーカー「Minton」が製品にしたのがはじまりと言われ...

ブラウニー・リリー

ブラウニー・リリー

夏のニューヨークは楽しみが多い。毎夏ニューヨーク市民が楽しみにしているのは、セントラルパークで開催されるサマーステージと呼ばれる無料コンサートだ。1973年のキャロル・キングのライブでは、なんと10万...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

007 木の平皿フィンランドのヘルシンキを旅した時に出合った木の平皿です。削り出した皿の表面に手仕事による柄が施されています。僕の推測では、何も変哲のないプレーンな木の皿を見たおかあさんが、細いキリで...

everything for good times.

everything for good times.

前回の続き「クレラの作るハニーマスタードソースは特別おいしいのよ」。マリーさんがそう言うと、カウンターテーブルを拭いていたクレラは手を止めて、はにかんだ。「母のレシピなんです。わが家はみんなハニーマス...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

006 白磁の茶椀なんてことない白磁ですが、すーっと二本の青い線彫りが美しく、薄いので軽く持ちやすいのが気に入っているところ。子どもの頃から実家で使っていたもので、ある日、母からもらいました。茶碗です...

クレラと冷めたスープ。

クレラと冷めたスープ。

前回の続きある日の晩、ワシントンジェファーソンホテルのすぐ横にある、マリーさんとアレンさん夫婦が営む簡易食堂で夕食をとろうとすると、マリーさんが新しく入ったというクレラという女性の従業員を紹介してくれ...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

005 「if」のピューター皿ロンドンのブリックレーンに一週間ほど滞在した思い出がある。イーストロンドン独特のエスニックな風情が心地よい旅先だった。「if」という名のベジタリアン向けのデリカテッセンが...

料理がおいしくなる魔法。

料理がおいしくなる魔法。

前回の続き午後3時を過ぎると、人の良さそうなイタリア人の若者が店にやってきて、老夫婦からキッチンの仕事を引き継いだ。若者の名前はニコロと言い、「何を作ってもおいしいのよ」とおばあさんに料理の腕前を褒め...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

004 1930年代のカフェオレボウル蚤の市で見つけたカフェオレボウル。一目見て、朝食のグラノーラにピッタリだと思って購入しました。白地のグリーンのシンプルな柄もすてき。高台のスタンプを見たらびっくり...

私たちの友だち。

私たちの友だち。

前回の続き9thアヴェニューを51丁目まで北上すると、交差点の角に人だかりが出来ていた。集まった人をかきわけて見てみると、高さ10センチほどの紙人形がアスファルトの地面から数センチ浮かんでいた。人形の...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

003 リーサ・ハッラマーのデザート皿フィンランドの名窯アラビアのアートデパートメントで、70年代に作られたリーサ・ハッラマーのデザートプレート。ネイビーの模様がどんな料理でも引き立ててくれるのが好き...

ようこそ、ヘルズキッチンに。

ようこそ、ヘルズキッチンに。

前回の続き42番街の安ホテルをチェックアウトした。真冬のニューヨークは息が真っ白になるくらいに寒かった。空を見上げると雲ひとつない青空が気持ちよく拡がっていた。行くあてもない不安な旅であるけれど、何も...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

002 アスティエの角皿和洋中華どんな料理にも合う白い角皿。パリのサントノレ通りにあるアスティエ・ド・ヴィラットで買いました。何にでも合うと言ったけれど、日曜日の朝、焼き立てのフレンチトーストをの...

口についたケチャップ。

口についたケチャップ。

前回の続き 夜のニューヨークは雨が降っていた。JFK空港に着いてすぐに、電話ボックスに置いてある電話帳を開き、安いホテルを探し、住所を手帳に書き写した。一泊15ドルだった。いつか映画で観た、黄色いボ...

食いしん坊のクローゼット

食いしん坊のクローゼット

001 三時のおやつに菊皿その名の通り、菊の花をモチーフにした伝統的なデザインが魅力の菊皿は、三時のおやつをちょこっと載せるわが家の定番です。蚤の市などでアンティークの菊皿を見つけると買わずにいられま...

あの日あの場所のひととき。

あの日あの場所のひととき。

一日に一度、何も考えずにいるひとときを作るようにしている。ぼんやりタイムと、そのひとときを呼んでいる。ひとときだから、10分のときもあれば、30分のときもある。たまに一時間のときもある。朝食のあとのと...

最新記事をお届けします