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食いしん坊のクローゼット

「今日もていねいに。」

食いしん坊のクローゼット

松浦弥太郎

エッセイスト

松浦弥太郎


017 ラッセル・ライトのカレー皿

十代の終わりにアメリカを訪れ、サンフランシスコ、ニューヨークに暮らした。楽しみのひとつに週末のフリーマーケット巡りがあった。買う買わないはどうでもよく、多種多様なアンティークやガラクタを見るのが楽しかった。その頃、よく見かけたのが、シンプルなデザインにうつくしい色合いのラッセル・ライトというテーブルウェアがあった。1950年代、食事をするテーブルを暮らしの中心に置くというインテリア提案をしたデザイナーのラッセル・ライト。華美ではなく、極めてシンプルを追求したその哲学を知り、当時は安価だったので一枚一枚集めていった。カラーバリエーションは多かったが、ぼく薄いグレーが好きで、よく手に取るようになった。いつしか、ぼくのグレーコレクションはほぼフルセットとなった。しかし日本に帰国後、生活に苦しくなり、コレクションすべてを手離した。けれども、どうしても手離したくなかったのがグレーのカレー皿だ。これはお金の無い頃にがんばって最初に買った一枚だった。カレーとごはんを分ける、ふわっとした有機的な曲線がとても気に入っていて、今でも日常的に愛用している一枚だ。カレーもいいけれど、今日はパンケーキと目玉焼き、焼いたソーセージを盛り付けて食べた。もう40年も使っている。


 

食いしん坊のクローゼット

001 三時のおやつに菊皿      
002 アスティエの角皿        
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿 
004 1930年代のカフェオレボウル    
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱

連載

「今日もていねいに。」の扉

松浦弥太郎

エッセイスト

松浦弥太郎

少しちからをぬき、キホンを大切にする松浦弥太郎さんと、彼ならではの素をつくる、くらしと食事。

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