食いしん坊のクローゼット
エッセイスト | 「今日もていねいに。」

食いしん坊のクローゼット

016 鳥獣戯画の盛鉢

ある日、世界遺産にもなっている京都・高山寺で、うさぎや猿が遊び回る姿を描いた鳥獣戯画の絵巻物を見て、うさぎがでんぐり返しをしていたりする、なんともかわいらしいその絵柄に惹かれて夢中になった。そういえば、この絵柄が染め付けられた湯呑み茶碗や豆皿をどこかの料理屋で見たことがあると思った。器に詳しい人に聞いてみたら、鳥獣戯画の器は、京都の伝統工芸のひとつである清水焼で知られていて、それを買うなら、五条坂にある「竹虎堂」という清水焼専門の器屋に行くといいと教わった。早速、訪ねると昔ながらの趣の良い店構えと、とても親切なご主人と奥さんが迎えてくれた。鳥獣戯画の器を探しているというと、いろいろと見せてくれながら、鳥獣戯画を描く職人にも上手い下手があり、今では上手い職人が少なくなったということを話してくれた。いくつかある中から選んでみると、やはり昔の職人の絵が良くて、大きめの急須と湯呑茶碗を買った。それをきっかけにして、京都に行くたびに「竹虎堂」を訪れ、鳥獣戯画の器を買い集めるようになって何年も経った。いくつか持っている鳥獣戯画の器の中でいちばん気に入っているのは、キャッキャとふざけながらうさぎが猿を追いかけ回している絵が描かれた盛鉢だ。絵が赤の鉢と青の鉢のふたつ持っている。この器が食卓にあると、うさぎと猿の声が聞こえてくるようで楽しい気持ちになる。おひたしや煮物を盛りつけたり、生菓子を置いたりすると、とても美しくてそれこそ料理の着物を実感する。同じものはもう手に入らないのが残念に思っている。


 

食いしん坊のクローゼット

001 三時のおやつに菊皿      
002 アスティエの角皿        
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿 
004 1930年代のカフェオレボウル    
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
019 欅の千筋茶碗
020 パリの買い物
021 アラビアのライス
022 沖縄の「やちむん」
023 ハルデンワンガーのセラミック皿
024 ベニントンポタリーのマグカップ
025 ウォルター・ボッセの「青いクマさん」

松浦弥太郎

著者プロフィール

エッセイスト
松浦弥太郎

2002年、セレクトブック書店の先駆けとなる「COWBOOKS」を中目黒にオープン。2005年からの9年間『暮しの手帖』編集長を務める。その後、IT業界に転じ、㈱おいしい健康取締役就任。2006年より公益財団法人東京子ども図書館役員も務める。ユニクロの「LifeWear Story 100」責任編集。「Dean & Delucaマガジン」編集長。他、様々な企業のアドバイザーを務める。映画「場所はいつも旅先だった」監督作品。著書に「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」など著書多数。

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