食いしん坊のクローゼット
エッセイスト | 「今日もていねいに。」

食いしん坊のクローゼット


020 パリの買い物

パリの楽しみのひとつに蚤の市巡りがある。中でもクリニャンクールのヴェルネゾンはパリで一番古い蚤の市で120年もの歴史があるという。この場所にアンティークリネンだけを扱うマダム・ジャニーヌ・ジョバンノーニさんの店がある。30年以上続いている老舗である。
一時期、バスクリネンを集めていたときがあり、少女のような笑顔のジャニーヌさんからたくさん買った思い出がある。
ジャニーヌさんはいつも真っ白なアンティークリネンのワンピースというかドレスを着ていて、店の中には、きちんとアイロンをかけて畳まれたリネンが整然と並び、アンティークといえど、清潔感に満ちたほんとうにすてきな空間で知られている。
先日、久しぶりに訪れると、90歳になったジャニーヌさんは喜んで迎えてくれた。その日はアンティークのキッチンクロス12枚が紐でまとめられた美しいセットを買った。色や柄の組み合わせがあまりにすてきなので日本に帰ってもそのままの状態でキッチンの棚に飾っている。その佇まいは、まるでジャニーヌさんの作品のようで紐解くのが惜しくて仕方がないからだ。
買い物といえば、パリで滞在したアパルトマンの近くにあった、こちらも女性がひとりで営むアンティーク食器屋で、ブルーとオレンジの柄がかわいらしい「ジアン」の古いデザートプレートに出会った。珍しいことに6枚がセットで揃っていた。こちらは毎日使っているけれど、そのたびに、パリで過ごしたあの日あの時がふわりふわりと蘇る。
いつも思うのだが、旅先で出会ったキッチンクロスにしても食器にしても、まさか日本にはるばるやってくるとは思いもしなかっただろうなということだ。ある意味、きっと彼らもいくつもの旅をして、たくさんの出会いを繰り返しているのだろう。
そんな旅や出会いを楽しんでくれているといいなあと思う。



 

食いしん坊のクローゼット

001 三時のおやつに菊皿      
002 アスティエの角皿        
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿 
004 1930年代のカフェオレボウル    
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
019 欅の千筋茶碗
020 パリの買い物
021 アラビアのライス
022 沖縄の「やちむん」
023 ハルデンワンガーのセラミック皿
024 ベニントンポタリーのマグカップ
025 ウォルター・ボッセの「青いクマさん」

松浦弥太郎

著者プロフィール

エッセイスト
松浦弥太郎

2002年、セレクトブック書店の先駆けとなる「COWBOOKS」を中目黒にオープン。2005年からの9年間『暮しの手帖』編集長を務める。その後、IT業界に転じ、㈱おいしい健康取締役就任。2006年より公益財団法人東京子ども図書館役員も務める。ユニクロの「LifeWear Story 100」責任編集。「Dean & Delucaマガジン」編集長。他、様々な企業のアドバイザーを務める。映画「場所はいつも旅先だった」監督作品。著書に「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」など著書多数。

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